カヌーカヤック-カナディアン・シーカヤック・リバーカヤック入門 > シーカヌーを知ろう
行きたい場所、いってみたい場所は、テレビや雑誌、リバーマップなど見ているうちに、自然と思いつくものです。川旅をはじめるにあたって、ショップなどのツアーに参加するという方法もありますが、自分で一から旅を作り上げようと思うのなら、こうした最初のイメージを大切にしましょう。ただ、行きたい場所が、必ずしも自分が行ける場所とは限りません。現地へ行くのにかかる時間と費用、その川を下るために必要な時間、そして技術…。いくつかの候補の川が見つかれば、それらのなかから実現可能な場所を選び出すといいでしょう。実現可能かどうかを判断するには、その川の情報を集めることが必要になります。川の情報として知っておきたいのは、適切なスタート&ゴールの地点、その区間の難所(瀬の難易度など)、行く時期の水量などです。キャンプしながらの川旅であれば、キャンプできそうな川原やキャンプ場があるか、食料はどこで購入できるかなどもチェックすべき項目となります。釣りが盛んな川原では、釣りの解禁日がいつなのかも調べておきましょう。
波立った海面では、ふたつの艇がぶつかるなどして別のトラブルを生む可能性があります。特に救助させる人間にカヤックが衝突すると、大きな事故につながりかねないので、実際のレスキューの現場では慌てず、確実に作業を行ないたいものです。トラブルは、不意に起こるからこそトラブルになります。とはいえ、ここまで説明してきたレスキュー方法を荒れ狂う海上で実践するのは難しいことです。いくらレスキュー方法に精通していても、トラブルが起きる前の対処法は重要です。海況を予測し、海が荒れてきそうなら早めに避難することを最優先しましょう。
実際に荒れた海の上で再乗艇することを考えると、サポートレスキューは極めて実践的な方法です。グループのメンバーと一緒に練習を重ね、手順をよく理解しておきましょう。サポートレスキューにはさまざまな方法論がありますが、ここでは最小単位であるふたり(サポート1名)で行なうパラレルサポート・レスキューを紹介しましょう。セルフレスキューと比べたときのメリットは、まず完全に水抜きを行なうことができること、そして安定した状態で乗艇できることです。ひっくり返った人の精神的な負担も和らげられるため、パニックを起こすような危険性も激減します。 ①ひっくり返ったバウに近づき、バウを確保します。 ②バウを自分の艇のデッキに乗せ、コックピットに入った水を出します。 ③自分の艇と前後が互い違いになるように、相手の艇を浮かべます。 ④泳いでいる人からパドルを受け取り、コックピットのリムをしっかり握って安定させます。 ⑤泳いでいた人は自分の艇に這い上がります。 ⑥乗艇の手順は、ひとりで再乗艇するときと同様で、まずうつ伏せの状態で足だけをコックピットに入れ、体を反転させながらシートに座ります。 ⑦スプレースカートをはめます。この間も、サポートする人は艇をしっかりつかんでおきましょう。 ⑧体勢が整ったら、パドルを渡して完了です。
岸から離れた海上でひっくり返ったとき、艇を引っ張って泳ぐのは非現実的です。体力を消耗せず、安全にできるセルフレスキューは、海でもやはりロールでしょう。少なくとも練習で成功したことのある人であれば、まずロールにトライするのがベストです。しかし、荒れた海の上で、しかも荷物を満載したシーカヤックとなると、ロールが失敗する可能性も高いでしょう。そこで次なる手段として覚えておいてほしいのが、海上での再乗艇の方法です。まずはひとりで行なう再乗艇ですが、ここで紹介するのはパドルフロートを使った方法です。何度か練習をして、すばやく確実に再乗艇できるようにしておきましょう。 ①まず、ひっくり返った艇を引き起こし、パドルを流さないようにしっかり保持しておきます。 ②パドルフロートを取り出し、パドルのブレードを差し込んだら、空気を入れて膨らませます。 ③もう一方のブレードを、コックピット後部のバンジーコードに差し込みます。 ④パドルフロートで安定させた艇に、ばた足の要領で勢いをつけて這い上がります。 ⑤這い上がったらうつぶせ状態のまま、まず足をコックピットに入れます。このとき、体重は必ずパドルフロート側に預けるようにしましょう。 ⑥足が入ったら体を反転させシートに座ります。 ⑦ビルジポンプでコックピット内の水を出します。 ⑧水が排出できたら、ビルジポンプを固定し、スプレースカートを完全にはめ、それからパドルを抜きます。このときにバランスを崩すケースも多いので慎重に行ないましょう。
岸がすぐ近くにある川に比べて、海上でのトラブルは岸にたどり着くことそのものに困難を生じます。水上での再乗艇も、海だからこそ必ず出来るようにしておきたい技術だといえるでしょう。グループのほかのパドラーが体力を消耗して漕げなくなってしまった場合、牽引するという手段があります。しかしながらこの方法は、牽引する側にも大きな負担がかかります。牽引するパドラーに一定以上の技量と体力、そして海況を見極める目が備わっていないと難しいのも事実です。熟練したパドラーがふたりいるのならば、2本のトウイングラインを使ってふたりで牽引することで、負担を大幅に軽減できます。さらにもうひとりサポートできるパドラーがいるのなら、牽引されるパドラーのそばに(近づきすぎるのは危険ですが)ついてあげましょう。慣れない海の上で、自分の力で漕げなくなるということは非常に不安なものです。近くに誰かがいることで精神的な負担は減らせるでしょう。 牽引する際の注意は、専用のトウイングラインを使うか、ロープをクイックリリースベルトに通すようにすることです。牽引する艇のラダーにロープが絡むようなトラブルは、決してありえないことではありません。自分の身に危険が及びそうになったら、すぐにロープを解放することです。この方法は、体力はまだあるものの、波や風が強くなって、怖くて漕げなくなってしまった人にも有効です。常に前へと進み、バウの向きも一定に保たれるため、自分でパドルを動かすことができるようになるのです。グループでツーリングに出かける前に、この牽引レスキューを練習しておきましょう。引っ張るためにかかる負担を実感しておくことで、現場での対応が落ち着いて行なえるようになるはずです。
波が高くなってくると、砂浜での出艇、上陸は困難になります。しかも厄介なことに、海の状況は刻々と変化していくので、一日のパドリングが終わって、さて上陸、という段階で、波が高くなってきたり、前日からキャンプして翌朝になったら海が荒れてきた、ということがありえます。サーフゾーン(波打ち際)で出艇、上陸ができるようになることは、将来の海況の変化を予測することと併せて、安全な旅をすることの条件となります。最初は小さな波のときを選んで、出艇と上陸の練習をしていきましょう。徐々に大きな波にチャレンジしていけば、自分の限界も分かるし、旅のなかで不意に同じような状況に陥っても、落ち着いて対処できるようになるはずです。 出艇の際は、波が一番弱いときに、弱い場所を狙って沖へと出て行くのが基本です。海の波は均一ではなく、また周期的に強くなったり弱くなったりします。まず波の状況を観察することから始めましょう。上陸する場合は、まず「波に乗らない」ことを最優先しましょう。波に後ろから押されると、艇が横向きにさせられます。結果、ひっくり返ったり、コントロールの出来ない状態になってしまうのです。波に乗ってしまったら、自分から艇を横向きにして、波に向かってブレイスします。この技術をブローチングと呼びますが、こうすることで艇を安定させることが可能になります。
上陸では、艇のボトムがつくまで漕ぎ進み、艇から降ります。多少でも波があると、接岸と同時に艇が横向きにさせれらることがあります。この場合は、必ず沖側へ降りるようにしましょう。さもないと、次の波に押された艇が自分に向かって流されてくることがあり、非常に危険です。また、ラダーやスケグがついたシーカヤックの場合は、沖へ出てからラダーなりスケグなりを下ろすこと、上陸の際にはあらかじめラダーやスケグを上げておくことが注意点として挙げられます。砂浜に接触した程度で即座に壊れるものではないですが、浜に点在する岩などにはさまると、トラブルを起こします。 磯場や石浜では、できるだけ艇のボトムを浮かせた状態で乗り降りをするようにしましょう。特にFRP製の艇は、強い衝撃によって割れることがあるので、なるべく、引きずったりぶつけたりしないように気を遣いましょう。ベテランがビギナーをサポートするというのも、水深のある場所での乗り降りでは有効です。ただし、波が高い状況ではかなりの危険を伴うことを覚えておきましょう。
海で出艇、上陸がしやすい場所は砂浜です。もちろん、ひとことで砂浜といっても、急激に深くなるような場所では、そこで波が突然立ち上がって崩れてくることがありますし、遠浅の砂浜では干潮時になると海岸線が沖合遠くへ後退することもあります。その日の状況次第で、出艇、上陸のしやすさは変わりますが、それでも磯場に比べれば、はるかに出艇しやすいことがほとんどです。波がほとんどなければ、砂浜からの出艇、砂浜への上陸の方法に、特に難しいことはありません。波打ち際に艇を置き、安定した状態で乗り込み、波のタイミングを見ながら漕ぎ出していきましょう。なお、荷物が満載されて重くなったシーカヤックは、ついつい波打ち際まで引きずっていきたくなりますが、これではボトムが傷んでしまいます。艇を長持ちさせたいなら避けるべきでしょう。
自分が進んでいるスピードは把握しておかなくてはいけません。風や潮流の影響を受けるとスピードは大幅に変わり、当初の目的地までの所要時間も、それによって変わってきます。こまめに自分の位置を把握し、2点間を漕ぐのにかかった時間でその距離を割れば、平均スピードが計算できます。日没までの時間と、残された距離を常に頭に入れ、目的地まで到達できることを確認しておきましょう。思った以上に時間がかかっているようであれば、プランの変更をすることも必要です。進むスピードは、潮汐流などによって左右されます。進行方向と逆に流れる潮汐流(向かい潮)に阻まれればスピードは遅くなり、進行方向に向かっている潮汐流(追い潮)に乗ればスピードは速くなります。自分の進むスピードを把握したなら、その後、潮流がどう変化するかを考え合わせる必要があります。向かい潮がこれまで以上に強くなるなら、スピードはさらに落ちるでしょう。これから潮どまりを迎えれば、潮汐流の影響は 受けにくくなるでしょう。もちろん、風や波についても同様です。強くなれば パドリングは困難になり、スピードが落ちます。今後の海況を予測することで、 現場でのプラン変更が可能になってくるでしょう。
いくら詳細なプランを立てても、実際の現場では、そのプランどおりに漕げるとは限りません。よく訪れる場所であれば潮汐流などの影響もかなり正確に予想できますが、そうでない場所では、局地的な地形などの条件で、潮汐表からは知りえることの出来ない流れが発生することも、よくあることです。そのため、現場では常に自分の位置を把握し、今後の状況変化を予測して行動することが求められます。まず、すべての前提となるのは、自分の位置を知るということです。地図や海図の目標物をもとに、常に自分が図の上のどこにいるのかを把握しておきましょう。漁港や目立った岬など、分かりやすい目標物がある海岸線では、とりたてて難しいことではありません。しかし、沿岸から離れたり、目標物が少ない状況では、それらから自分の位置を知る「山たて」という方法を知っておく必要があります。特に難しい方法ではないので覚えておきましょう。
時々刻々と状況が変化するのも海ならではのことです。特に潮汐流が大きな影響を及ぼす海域では、干潮の状況についても知っておきたいものです。インターネットなどでも潮汐表を見ることができるので、当日の潮まわり(大潮か小潮か)や満潮、干潮の時刻は把握しておきましょう。資料を手にする以前に、ビギナーがまず疑問に思うのは、「一日何kmくらい漕げるのか?」ということでしょう。これは海況によって5kmしか漕げないときもあれば、ベテランが一日50km以上漕ぐこともあり、一概には言えません。実際にツアーなどに参加し、そのときに漕いだ距離を知ることで、自分の漕げる距離がだんだん分かってくるでしょう。海では、相手(海況)を知り、己(体力、技術)を知ることが大切です。経験を積みながら、無理のないプランニングができるようにしましょう。
シーカヤックの旅を始めるにあたっては、多くの場合、ツアーに参加するか、ベテランのいるグループに加わって旅を経験することになるでしょう。この段階では、自分で計画を立てる必要はありませんが、いずれは自分の力で海を旅することが出来るように、プランニングの知識を少しずつつけていきましょう。いつ、どこへ、誰と漕ぐかについては、川旅の計画と基本的に同じだと考えていいです。ここでは、海に特有の情報の集め方などを説明していきましょう。川旅では主に地形図を参考にプランを立てていきますが、海では地形図の代わりに海図を使います。海図には水深や潮流の速さ、それに暗岩、洗岩の有無などが記載されていて、ここまで説明したような風、波、潮流の影響を想像する助けになってくれるでしょう。地形図に比べると高価なものですが、グループにひとつは用意しておくといいです。
動力船とシーカヤックの間では、常に動力船に優先権があります。なので、まず第一に考えたいことは、動力船には極力、近づかないということです。ルール以外にも理由はあります。シーカヤックの上から見ていると、動力船のスピードを把握するのは難しいことなのです。まだ間に合うだろうと前を横切ろうとすると、思いのほか相手が速いスピードで近づいてきて危ない思いをすることがあります。また、こちらが相手に気づいているからといって、向こうも同様にシーカヤックの存在に気づいているとは限らないのです。特に漁をしている最中の漁船などは、前方にあまり注意を払ってないこともあるので、パドルを高く掲げるなどして存在をアピールするか、できるだけ遠くを漕ぐようにしたほうが安全でしょう。
沿岸ではさまざまな動力船が行き来しています。漁船、遊漁船、プレジャーボート、そして東京湾や大阪湾といった大きな港を擁する場所ではタンカーなどの大型船も航行しています。これらの船が事故を起こさないよう、海にも交通法規があるのです。ルールを知ることで動力船の動きを予想できるようにしましょう。もちろん、このルールは、たとえシーカヤックを漕ぐときでも守らなければいけないものです。実際のパドリングでもっとも頻繁に出くわすシチュエーションは、漁港の周りを漕ぐことでしょう。出艇、上陸に利用することもあるし、漁港の前を横切っていくこともあります。漁港は海上の交通がもっとも集中する場所になります。特に、漁港の入り口付近に防波堤があると、それに遮られて動力船の接近に気づかないことがあります。現場では動力船の動きを目と耳で察知し、すばやく漕ぎぬけるようにしましょう。
潮汐流は、地形によってそのスピードが変わります。これは川の流れが、川幅が狭まることによって速くなり、瀬を形成するのと同様です。「海峡」とと呼ばれるような、対岸との距離が狭まった海域では、潮汐流が速くなります。たくさんの島が点在する瀬戸内海などでは、島と島の間に横たわる水路で、川のような流れが生まれることもあります。潮汐流の影響を強く受ける海域では、その強さと方向を海図や潮汐表で事前に調べておきましょう。何時に最大のスピードになるか、何時に流れが止まって、逆の流れになるのかが分かっていれば、それを利用して漕ぐことも可能です。流れが味方についてくれないときは、潮汐流が緩くなるまで待つというのもひとつの方法になります。
海にも流れがあります。ひとつは海流と呼ばれるもので、地球規模の海水の流れです。日本付近でいうと黒潮や親潮がそれにあたります。潮岬や足摺岬のように、黒潮が沿岸にぶつかっている場所もありますが、海流の影響を受けやすいのは主に海峡横断などを行なうときに限られます。もうひとつの流れは潮汐流です。これは潮の満ち干によって発生します。潮の干満は、月と太陽の引力によって海水がひっぱられて移動することから起こり、もっとも強くひっぱられるときが満潮、その逆を干潮と呼びます。満潮と干潮の潮位(水位)の差が一番大きくなる時が「大潮」、もっとも小さいときが「小潮」になります。潮汐流は、潮位の差が大きいほど強く、速く流れます。ただ、潮位は日本全国どこでも同じというわけではなく、たとえば日本海側では大潮の時でも50cmほどしか潮位の差がない場所があるかと思えば、太平洋側では平均して2m程度の差があり、瀬戸内海の一部地域では、最大で3mもの差があるのです。
うねりは沿岸に近づくと地形の影響を受けて変化し、パドリングに大きな影響を与えるようになります。砂浜や暗岩など、浅い場所に到達すると、うねりは高く持ち上がり、最後は波頭が崩れるようになります。また、岬にぶつかったうねりは跳ね返り、あとからやってくる波と干渉し合って、より大きな波をつくりだします。危険だと判断したらエスケープできる川の瀬と違い、海の波は、それが風波であろうとうねりであろうと、向こうからやってくるところに対処の難しさがあります。天気図や現場で感じる風向きなどから予想をたてると同時に、漕行不能になるまえに避難できる場所をルート上に確保しておくことが大切です。
水面に風が吹くと、波が立ちます。そして波の高さは、風の強さと吹いている時間、そして風が吹く距離に影響されます。つまり、強い風が長時間、長い距離を吹くほど、波も大きくなるというわけです。風波とは、パドリングしているその海域で吹いている風によって発生する波を指します。常に風の影響を受けているため、波長(波頭の間隔)のわりに高さのある波になりやすいのです。風波のなかでは、短い周期で上下する海面にしっかりパドルを入れ、空振りしないようにすることが重要です。また、艇が波に叩かれて不安定な状態になるので、推進力を失わないようにパドリングを続けましょう。これに対し、うねりとは、遠く離れた海域で風によって発生した波が伝わってきたものです。風波に比べて緩やかな波で、沖合いではパドリングに影響を及ぼすことはほとんどありません。また、前述のように、風が吹く距離によって規模が変わるので、風が長く吹くことのできる太平洋側にくらべ、日本海側や瀬戸内海では、うねりは小さいものになります。
前からでも、後からでも、また横からでも、強風はパドラーにとってやっかいな存在であることに違いはありません。推進力を失うという意味では、前からの風が一番悪影響を及ぼしますが、後からの風は、特にそれがうねりや波を伴った場合、より不安定な漕ぎにくい状況をつくりだします。横方向から風が吹くと、カヤックの進行方向を保つのが難しくなります。カヤックに限らず、船舶すべては、その形状から風の吹いてくる方向を向こうとします。ラダーなどで保針性を高めることが基本的な対処法です。なお、沖から陸へと強風が吹いているときは、波が岸へと打ち寄せるため、上陸が難しくまるでしょう。風向きをみて、風の入り込まない上陸地点を探すことも大切です。
後述するように、風は波をつくりだすことで、パドリングに大きな影響を与えますが、風だけをとってみても、その影響は決して小さいものではありません。強風が吹くと、パドルが風にとられてひっくり返る、「風沈」もありえるのです。川では多くの場合、谷筋を通って風が流れるため、背後から、もしくは前からの風を受けるものです。しかし海では、自分の進行方向に対してあらゆる方向から風が吹いてくるのです。風は気圧の高いところから低いところへと向かって吹きますが、沿岸では地形の影響を受けやすいのです。特に陸の方向から風が吹いているときは、谷筋などから抜ける風が、突然吹き付けることもあるでしょう。陸風(オフショア)、海風(オンショア)と呼ばれる、沿岸ならではの風の存在も知っておきたいものです。海(水)は陸(土)に比べて温まりにくく、冷めにくいため、太陽熱の影響を受けると、この温まり具合の違いが局地的な上昇気流を発生させます。特に太陽光の強い春から夏の間は、強い陸風、海風が吹くものです。
日本列島を取り囲む広大な海……海を旅するカヤックに乗れば、そのすべてがフィールドになります。島国・日本は、シーカヤックを存分に楽しめるフィールドをもつ国だといえるでしょう。海の表情は多彩です。日本国内だけでいっても、野性味あふれる北海道の海、夏の明るい雰囲気が魅力の日本の海、数多くの島が点在する瀬戸内海、イルカに出会える太平洋、コーラルブルーに輝く沖縄の海……と、すべてが個性をもっています。このように多彩なフィールドを漕ぐことが、シーカヤックの楽しみであり、同時に難しさにつながっています。太平洋を渡ったパドラーも存在しますが、シーカヤッキングの主なエリアは、沿岸と、岸から目視できる島になります。海を漕ぐにあたっては、このエリアで起こりうる気象や海況の変化について理解を深めておきたいものです。 海の状況を大きく変化させるのは、風、波、そして海流(主に潮汐流)です。川と決定的に違うのは、同じ海域であっても、これらの条件によって、波ひとつない海面にもなれば、風と波が荒れ狂う状態にも変化するということです。こうした変化を知り、予測し、それに対応することが重要なのです。風、波、海流の影響は、地形によって変わってきます。うねりがまともに当たる岬の先端と、風が入り込まない湾内では、海面の状況が大きく変わることは誰でも想像できるでしょう。 海岸線はどこも同じというわけではありません。夏に海水浴客が訪れる静かなビーチ、荒波が押し寄せる岩壁、漁船や釣り船が行き来する漁港と、陸から見るだけでもダイナミックな変化があります。それに加えて、海底の状況によって、水面が波立ったり、強い流れが生まれたりもします。風、波、海流といった、時間経過による変化と、こうした地形変化を併せて理解できるようになるといいでしょう。
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